特集3

ハピネットグループは、災害発生時に迅速かつ的確に対応できる能力を向上させるため、実際の状況を想定したBCP(事業継続計画)訓練を定期的に実施しています。これにより、「健全かつ有効なコーポレートガバナンス基盤の構築」を推進し、持続可能な経営体制の強化を目指しています。
実効性のあるBCP体制の構築に向けて
企業の持続的な成長と信頼性の確保には、事業継続とリスク対応の体制強化が不可欠です。ハピネットグループは、災害などの緊急事態においても、事業活動を迅速に復旧させることが、社会的責任を果たし、ステークホルダーの信頼に応えることにつながると考え、平時から災害に備える体制づくりに注力し、BCP(事業継続計画)訓練を継続的に実施しています。
訓練の目的と重点テーマ
2022年には従来の地震対応を中心としたBCPマニュアルを大幅に見直し、2023年からはその実効性を検証するための実践的な訓練を本格的に導入しました。訓練を通じて現場の課題を洗い出し、実効性のあるBCP体制の構築に向けて、運用に根差した改善を重ねています。BCPは単なる危機対応策にとどまらず、コーポレートガバナンスを支える仕組みの一つでもあります。緊急時に必要な情報を正しく収集し、迅速に判断・共有するプロセスを訓練によって体得することで、組織全体の実行力と判断力の底上げを図っています。
「想定震度6強」─ 首都直下型地震を想定したシナリオ
今年度の訓練は、「即応力の強化」に焦点を当て、実戦さながらの2部構成で実施しました。第1パートは、発災直後の約3時間を75分間に凝縮した「ブラインドシナリオ形式」による模擬対応です。参加者は事前に内容を知らされておらず、刻々と変化する火災・津波・交通状況、建物被害、負傷者発生といった複雑な状況の中で、適切な判断と行動を求められました。
第2パートでは、経営層が参加する「緊急対策本部会議」を模擬的に開催しました。各事業部のプレジデントが自部門の状況と対応を報告し合い、経営陣が組織横断的な意思決定を行うプロセスを確認。情報の流れや判断のタイミングといった実務面を検証することで、より実効性のある改善につなげています。
今回の訓練では、首都直下型の震度6強の地震を想定。電力供給が50%、通信環境に大幅な制限がある中で、インターネットのみが使用可能という設定のもとで実施しました。さらに、プレジデント不在時の対応シナリオや、重傷者・死亡者が発生するシビアな状況も加え、経営層への報告・相談体制も含めた総合的な対応力の強化を図りました。
訓練では、社外のダミー機関と連携し、状況付与カードや照会・回答・指示カードといったツールを活用。社内外との情報連携の難しさや、限られた情報の中で判断する必要性をリアルに再現しました。情報が不足している、あるいは期待通りの回答が得られない状況に対応する訓練を繰り返すことで、即応力の重要性が改めて浮き彫りとなりました。このような実践経験の積み重ねが、マニュアル理解の枠を超えた実践力の向上へとつながっています。


訓練から見えた改善のヒント
一方で、今回の訓練を通じて、いくつかの改善点も見えてきました。例えば、負傷者・重傷者情報の報告経路については、これまでのフローでは伝達に時間がかかる場面がありました。そこで、現場から責任者へ直接報告できるルートへの見直しを図り、情報伝達の迅速化を進めています。
また、情報共有ツールである「Microsoft Teams」の活用方法にも改善の余地があることがわかりました。情報の流れがテキストに埋もれがちであることから、共有方法をファイル形式へと変更するなど、より確実な伝達手段の整備を進めています。
「備える力」を企業文化に
災害の発生そのものを防ぐことは困難ですが、被害を最小限に抑え、いち早く事業を復旧させるためには、初動対応の質が問われます。そのためには、平時からの訓練を通じて、判断力と即応力を高めておくことが不可欠です。
ハピネットグループの強みは、日常業務におけるスピーディーで的確な情報共有にあります。この文化は、非常時においても大きな力を発揮します。こうした企業文化の上に、訓練という実践を積み重ねることが、さらなる組織力強化につながると考えています。
今後も、訓練と啓発活動を通じてBCP体制の実効性を高めることで、災害などの有事にも動じない強靭な組織を育み、事業の継続性とステークホルダーからの信頼を守り続けていきます。
担当者の声
(株)ハピネット 経営本部 経営企画部 経営企画チーム 吉野 美玲
訓練を重ねて実感した、全社の対応力と意識の変化
経営企画部門のリスク担当として、今回の訓練では、企画立案をはじめ、会場やツールの整備、約40名におよぶ参加者の調整、シナリオの策定、事前説明会の実施など、すべての工程を担当しました。訓練後にはアンケートを実施し、得られた意見をもとに関係部署と連携しながらマニュアルの改訂にも取り組みました。
特に印象に残っているのは、参加者の対応力が明らかに向上していたことです。昨年も参加された方が多かったこともあり、部門間の連携が格段にスムーズになり、緊急対策本部への報告や判断も的確に行われていました。追加した厳しいシナリオにも真剣に向き合う姿勢が随所に見られ、パート2の会議模擬でも、より質の高い報告がなされていたため、継続して啓蒙や訓練を実施することに大きな手応えを感じました。
一方で、課題もあります。当日の情報伝達では部門間で理解や認識に差が生じていることがわかり、マニュアルの改善と関係部署との連携強化を早速進めています。
BCP訓練は、単なる形式的なイベントではなく、企業のガバナンス強化に直結する重要な取り組みです。特に、緊急時のリスクマネジメント体制を実際に体験し、備えるという意味では、日常業務では得られない貴重な機会だと感じています。こうした体制が整えば、企業としても一体感をもって災害時に対応できると確信しています。
準備は大変でしたが、経営者をはじめとする参加者全員が真剣に取り組む姿を目の当たりにし、大きなやりがいを感じました。また、ここ数年で社内全体の「リスクに向き合う意識」が確実に高まっていることも実感しています。今後は、グローバル展開を見据えたリスク管理体制の構築にも力を入れていきたいと考えています。
災害やリスクは、いつどこで発生するかわかりません。だからこそ、常に意識して備えることが重要です。リスクへの対応は後回しにされがちですが、平時から準備しておくことが、企業価値の保全にもつながります。リスク担当として、これからも全社的な意識の醸成と体制整備に取り組み続けていきたいと思います。
