特集2
中長期ビジョンを従業員一人ひとりの行動へとつなげるため、ハピネットでは第10次中期経営計画の始動に合わせ、全従業員1,154名を対象とした「ビジョン浸透プログラム」を実施しました。代表取締役社長・水谷敏之と1,154名の従業員との直接対話(1on1)や、全社横断型のワークを通じて、従業員がビジョンを自身の業務や役割に引き寄せ、日々の行動へと落とし込むとともに、Belonging(帰属意識)の醸成にもつなげることを目指しています。
人々に感動を提供し、夢のある明日をつくるために
ハピネットは2022年4月、10年後の目指すべき姿を示した長期ビジョン「エンタテインメントの可能性を追求し、“from”ハピネットで世界をワクワクさせるクリエイティブカンパニー」を策定しました。2023年からは第9次中期経営計画、2025年4月からは第10次中期経営計画を推進し、ビジョンの実現に向けた取り組みを進めています。
ハピネットが中間流通としての強みを活かしながら、国内から海外へフィールドを広げ、さらなる成長を実現するためには、会社が目指す姿を従業員一人ひとりが理解し、自身の業務や役割に結びつけていくことが重要です。そこでハピネットでは、従業員が部門を超えて意見を交わしながら、ビジョンを自身の業務や役割に引き寄せ、行動計画を立てることを目指し、全社横断型の「ビジョン浸透プログラム」を実施しました。
社長との対話で、会社と個人の未来を結びつける
ビジョンを「知っている」状態から「自分事として動ける」状態へと引き上げるため重視したプログラムのひとつが、2025年に代表取締役社長に就任した水谷敏之社長と全従業員との直接対話です。2025年8月から11月にかけて東京・大阪・福岡の3拠点で行われた全40回において、社長自身の言葉でビジョンへの想いを伝えるとともに、従業員一人ひとりと1on1で直接対話する場を設けました。会社からの一方的な発信ではなく、従業員が自身の考えを社長に直接届けられる場とすることで、会社と個人の未来を双方向につなぎ、全社一体感の醸成を図りました。
また、管理職向けプログラムでは、社長がファシリテーターとして参加するグループディスカッションも実施しました。管理職同士が部下の行動をどう促すかという具体的な経験や悩みを共有しながらマネジメントの在り方を見直す機会とし、管理職層がビジョンの体現者となることで組織全体へのビジョン浸透を図る設計としています。
理解から行動へつなげるための4ステップ
本プログラムは、4つのステップで構成しました。会社が掲げるビジョンを、参加者自身が咀嚼し、自身の業務・キャリア・将来像と結びつけ、最後は社長の前で自身の言葉として語る。この一連の流れが、単なる理解にとどまらない行動変容を促す仕掛けとなっています。
| ステップ | テーマ | 内容 | 狙い |
|---|---|---|---|
| Step 1 | 会社のビジョンを学ぶ | ビジョン制定の背景を語る社長ビデオメッセージ、事務局による対面解説 | 長期ビジョン、中期経営計画をより深く理解する |
| Step 2 | 会社の未来を考える | カンパニー横断グループワーク(ワールド・カフェ形式※) | さまざまな角度から会社やカンパニーの未来を想像する |
| Step 3 | 会社と自身の未来を結びつける | 自分自身のキャリアと行動の言語化 | 会社と自身のキャリアを結びつける |
- ※ワールド・カフェ形式:参加者が少人数のグループに分かれ、テーマについて対話しながらテーブルを移動していくワークショップ手法
率直に語り合い、気づきを持ち帰る場づくり
ビジョンを自分事として捉えるためには、参加者が安心して本音を語れる場の設計が不可欠です。本プログラムでは率直な対話が生まれやすい環境をつくるため、「本音で語り合う」「他者の意見を批判しない」「議論を楽しむ」「ここだけの話にする」というルールを徹底しました。
また、模造紙への書き込みを通じて考えを可視化するグループワーク形式を採用しました。カンパニーや部門、役職を越えた対話を通じて、普段は接点の少ない他者の視点や価値観に触れることは、「自分もこの組織の一員として未来をつくっている」という実感を育む機会にもなります。こうした実感は、自身が組織の一員として認められ、貢献しているというBelonging(帰属意識)の醸成につながり、従業員エンゲージメントの向上を支える土台になると考えています。
一方、ビジョン浸透の取り組みにおいて課題となりやすいのが、「プログラムで終わってしまう」という点です。今回はこの課題に対応するため、従業員一人ひとりが策定したアクションプランをチーム内で共有する機会を設けました。メンバー同士が互いの目標や行動の方向性を理解し支援し合える環境をつくるとともに、「チームに宣言した」という事実が個人の行動継続を後押しする動機づけになると考えています。個々の行動の積み重ねが部門目標の達成につながり、グループ全体のビジョン実現を支える力になるという考えのもと、ビジョンに向けた行動をより実践しやすい形へとつなげています。
数値で示された手応えと組織の変化
プログラム実施後に全参加者を対象に実施したアンケートでは、9割以上の従業員が社長との対話を有益だったと回答しています。満足度・ビジョン理解度・行動の明確化のいずれの項目においても、一般職・管理職ともに高い水準の結果が得られました(グラフ参照)。単なるビジョン理解にとどまらず、具体的な行動計画への落とし込みまで実現できたことが確認できました。
中長期的な組織変化としても手応えが表れています。2018年から年2回実施している組織診断では、全社横断型プログラムを開始した2022年8月以降、「理念の発信と伝達」「理念の現場浸透度」の2項目がいずれも上昇しています。継続的なプログラムの積み重ねが組織全体の意識変化として表れており、従業員エンゲージメント向上という観点からも、着実な前進を示すものと捉えています。
- ※ 株式会社リンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」より抽出
ビジョンを日常の判断と行動に根づかせる
ビジョン浸透は、プログラムの実施にとどまらず、日常業務の中で自然に語られ、互いの行動を認め合える組織文化の定着をもって初めて実現するものです。今後は事業部門別・チーム別など実施単位を柔軟に変えながら参加型の手法も取り入れ、より主体的に関われる形を継続的に模索していきます。一人ひとりの行動の積み重ねが部門目標の達成を経てグループ全体のビジョン実現へとつながる――。そうした循環の構築を通じて、ハピネットグループならではの価値創出と持続的な成長を実現していきます。
担当者の声
(株)ハピネット 経営企画部 吉野美玲、大嶋ゆきみ、齋藤泰児
人材開発部 小川真史、寺内智彦
「伝える」から「共に考える」場へ
本プログラムは、人材開発部門と経営企画部門が合同で企画・運営しました。通常業務と並行しながら、プログラム内容の検討、社長ビデオメッセージの制作、全40回の登壇・司会進行、管理職向けプログラムの全4回の企画・運営まで、事務局として一連を担いました。
設計で最も意識したのは、「会社からの一方的な発信で終わらせない」ことでした。参加者が自分のなりたい姿と会社の未来を考えたうえで、社長や他の参加者に発表し、最後に社長からフィードバックを受ける。この一連のプロセスを通じて、ビジョンを自分事として捉えられるようにすることを重視しました。また、「本音で語り合う」「他者の意見を批判しない」「議論を楽しむ」「ここだけの話にする」という4つのグランドルールを設け、誰もが安心して発言できる場をつくることを徹底しました。加えて、模造紙に自由に書き込む形式を取り入れたのも、発言が苦手な参加者も対話に加わりやすくするための工夫です。こうした場づくりへのこだわりが、高い満足度につながったと感じています。
アンケートの結果には、私たちとしても手応えを感じています。数値としての成果はグラフの通りですが、自由記述では「普段話せない他部門の人と本音で話せた」「3年後の自分を具体的にイメージできた」といった声も多く寄せられており、数字には表れにくい変化も実感しています。
一方で、全社一律の形式では受け身になりがちという課題も認識しています。今後は事業部門別・チーム別など実施単位を柔軟に変えながら、より主体的に参加できる形を模索していきます。ビジョンやバリューが日常業務の中で自然に語られ、互いの行動を認め合える組織文化の定着に向けて、継続的に取り組んでいきます。
